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東京地方裁判所 昭和63年(特わ)2749号 判決

本店所在地

東京都新宿区西新宿六丁目二六番九号

日勧通商株式会社

(右代表者代表取締役 横山正)

本籍

同都豊島区池袋本町四丁目二一〇番地

住居

神奈川県座間市相模が丘四丁目四五番一九号

会社役員

横山正

昭和一二年八月五日生

右の者らに対する法人税法違反、被告人横山正に対する道路交通法違反、有印私文書偽造、同行使各被告事件について、当裁判所は、検察官中島鈆三出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人日勧通商株式会社を罰金二五〇〇万円に、被告人横山正を懲役二年にそれぞれ処する。

被告人横山正に対し、この裁判確定の日から四年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人日勧通商株式会社(以下、被告会社という。)は、東京都新宿区西新宿六丁目二六番九号(昭和六三年二月二九日以前は同所六丁目一二番六号)に本店を置き、不動産の売買及び仲介等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人横山正(以下、被告人という。)は、右被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、

第一  被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和六〇年一〇月一一日から同六一年八月三一日までの事業年度における同社の実際所得金額が一億六二七〇万一七二五円で、課税土地譲渡利益金額が一億六五五三万五〇〇〇円あった(別紙(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六一年一〇月三一日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所在の所轄淀橋税務署(昭和六二年七月一日「新宿税務署」と改称)において、同税務署長に対し、その欠損金額が三九三万九二八円で、課税土地譲渡利益金額も零であり、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第二七四号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同社の右事業年度における正規の法人税額一億二六四万八一〇〇円(別紙(2)脱税額計算書参照)を免れ、

第二  公安委員会の運転免許を受けないで、同六二年八月二日午後六時一〇分ころ、千葉県佐倉市寒風一〇六七番地一(東関東自動車道下り線)付近道路において、普通乗用自動車を運転し、

第三  同日午後六時一八分ころ、同県印旛郡酒々井町馬橋六二一番地一(東関東自動車道下り線)付近道路において、同県警察本部交通部高速道路交通警察隊司法巡査根子和行から、道路交通法違反事件(速度違反)について取調べを受けた際、実兄横山国雄の氏名を詐称して前記道路交通法違反(無免許運転)等の刑責を免れようと企て、自己を横山国雄と名乗り、右巡査が交通事件原票二通(告知書番号三-六三八一三五、同三-六三八一八三)を作成するに際し、同原票中の道路交通法違反現認報告書のとおり違反したことは相違ない旨記載のある供述書氏名欄に、行使の目的をもつて、ほしいままに、それぞれ横山国雄と冒書の上指印し、もつて偽造した他人の署名を使用して事実証明に関する文書二通を偽造し、これを即時、同所で同巡査に対し、あたかも真正に成立したもののように装い、それぞれ提出して行使し、

第四  公安委員会の運転免許を受けないで、同六二年九月二一日午前一一時五〇分ころ、東京都世田谷区用賀四丁目六番(首都高速三号線上り線)付近道路において、普通乗用自動車を運転し、

第五  同日午後零時二〇分ころ、同所において、警視庁第二交通機動隊司法巡査長島美智孝から、道路交通法違反事件(座席ベルト着用義務違反)について取調べを受けた際、実兄横山国雄の氏名を詐称して前記道路交通法違反(無免許運転)等の刑責を免れようと企て、自己を横山国雄と名乗り、右巡査が交通事件原票(告知書番号七A七一四〇三六)を作成するに際し、同原票中の道路交通法違反現認報告書のとおり違反したことは相違ない旨記載のある供述書氏名欄に、行使の目的をもつて、ほしいままに、横山国雄と冒書の上指印し、もつて偽造した他人の署名を使用して事実証明に関する文書一通を偽造し、これを即時、同所で同巡査に対し、あたかも真正に成立したもののように装い、提出して行使したものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

判示冒頭の事実につき

一  東京法務局新宿出張所登記官作成の登記簿謄本

判示第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する昭和六三年一二月二二日付供述調書

一  横山八重子の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の領置てん末書及び査察官報告書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上高調査書

2  受取手数料調査書

3  賃借料調査書

4  消耗品費調査書

5  事務用品費調査書

6  受取利息調査書

7  支払利息割引料調査書

8  固定資産除却損調査書

9  申告欠損金調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書二通

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成元年押第二七四号の1)

判示第二、第三の事実につき

一  被告人の検察官(昭和六三年一〇月五日付及び同年一一月一九日付)及び司法警察員(同年二月一六日及び同年三月八日付)に対する各供述調書

一  横山国雄(昭和六三年一月一四日付)、森田純生及び根子和行の司法警察員に対する各供述調書

一  司法警察員作成の道路交通法違反並びに有印私文書偽造同行使被疑事件捜査報告書

判示第三の事実につき

一  千葉県警察本部刑事部鑑識課長作成の「指紋の対照結果について」と題する書面

一  千葉県警察本部長作成の「鑑定結果について」と題する書面

一  押収してある交通事件原票二葉(平成元年押第二七四号の3、4)

判示第四、第五の事実につき

一  被告人の検察官(昭和六三年一一月一一日付)及び司法警察員(同六二年一〇月三日付)に対する各供述調書

一  横山国雄(昭和六二年九月二二日付)及び長島美智孝の司法警察員に対する各供述調書

一  司法警察員作成の有印私文書偽造同行使並びに道路交通法違反被疑事件捜査報告書

判示第四の事実につき

一  司法警察員作成の運転免許の有無等に関する照会結果報告書

判示第五の事実につき

一  警視庁刑事部鑑識課長作成の指紋等確認通知書

一  押収してある交通事件原票一通(平成元年押第二七四号の2)

(法令の適用)

一  罰条

1  判示第一の所為

被告会社につき 法人税法一六四条一項、一五九条一、二項

被告人につき 同法一五九条一項

2  被告人の判示第二、第四の各所為

いずれも道路交通法一一八条一項一号、六四条

3  被告人の判示第三、第五の各所為

有印私文書偽造 いずれも刑法一五九条一項

同行使 いずれも同法一六一条一項、一五九条一項

二  科刑上一罪の処理

被告人の判示第三、第五の各有印私文書偽造と同行使

いずれも同法五四条一項後段、一〇条(一罪として犯情の重い偽造有印私文書行使罪の刑で処断)

三  刑種の選択

被告人の判示第一、第二、第四の各所為につき

いずれも懲役刑選択

四  併合罪の処理

被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条〔刑及び犯情の最も重い判示第三の罪(うち告知書番号三-六三八一三五文書についての罪)の刑に加重〕

五  刑の執行猶予

被告人

同法二五条一項

(求刑 被告会社につき罰金三〇〇〇万円、被告人につき懲役二年)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村俊夫)

別紙(1)

修正損益計算書

日勧通商株式会社

自 昭和60年10月11日

至 昭和61年8月31日

〈省略〉

別紙(2)

脱税額計算書

日勧通商株式会社

自 昭和60年10月11日

至 昭和61年8月31日

〈省略〉

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